税理士による経営コンサルティングとは?依頼できる内容やメリット、税理士の選び方を解説
税理士は、税務申告や税務相談だけを行う専門家だと思われがちですが、実際には税務・会計の知識を生かして、企業の経営改善をサポートすることも可能です。
税理士法上の「税理士業務」は、税務代理、税務書類の作成、税務相談が中心となっています。国税庁も、これらを税理士の基本的な業務として説明しています。
一方で、経営計画の策定、資金繰りの改善、業績分析、管理会計の導入などの経営支援は、税務そのものとは別の業務として、税理士事務所が提供するサービスの一つとなっています。
つまり、「税理士だから自動的に経営コンサルティングまで対応してくれる」というわけではありませんが、経営支援に力を入れている税理士へ依頼すれば、税務と経営をまとめて相談できるということです。
税理士による経営コンサルティングとは?
税理士による経営コンサルティングとは、会社の決算書や試算表などの会計データを分析し、経営者の意思決定や会社の成長を支援するサービスです。
例えば、売上が伸びているにもかかわらず利益が増えていない会社であれば、「どの費用が利益を圧迫しているのか」「どの商品・サービスが利益に貢献しているのか」といった分析を行います。
また、資金繰りに不安がある会社であれば、今後の入出金を予測したうえで、金融機関からの借入や設備投資のタイミングを検討することもあります。
通常の税務顧問では「過去の数字を正しく処理する」ことが中心になりやすいのに対して、経営コンサルティングでは、会計データを未来の経営判断に活用することが大きな特徴です。
税理士に依頼できる経営コンサルティングの内容
税理士による経営支援にはさまざまなものがあります。事務所によって対応範囲は異なりますが、代表的な内容を紹介します。
決算書・試算表を使った経営分析
まず基本となるのが、会社の決算書や毎月の試算表を使った経営分析です。
単に「売上がいくらだった」「利益がいくら残った」という結果を見るだけでなく、前年との比較や予算との比較を行い、会社の状況を細かく分析します。
例えば、
- 売上高は伸びているか
- 利益率は改善しているか
- 人件費が増えすぎていないか
- 借入金の返済負担は適正か
- 資金繰りに問題がないか
などを確認します。
経営者自身では気付きにくい数字の変化について、税理士から客観的な指摘を受けられることがメリットです。
経営計画・事業計画の策定
会社を成長させるためには、現在の数字を見るだけでなく、「これからどうするのか」を数字に落とし込むことも重要です。
税理士による経営コンサルティングでは、売上目標や利益目標、設備投資、人件費などを考慮した経営計画や事業計画の策定をサポートしてもらえる場合があります。
例えば、「3年後までに売上を1.5倍にする」という目標を設定した場合、必要な顧客数や従業員数、広告費、設備投資などを検討し、具体的な数値計画に落とし込んでいきます。
計画を作ることで、経営者の頭の中にある目標を会社全体で共有しやすくなります。
資金繰り・キャッシュフローの改善
黒字企業であっても、手元のお金が不足してしまえば事業を継続することは困難です。
そのため、経営では「利益」だけでなく「キャッシュフロー」を把握することが重要です。
税理士は会社の売掛金や買掛金、借入金、税金などの支払予定を確認し、将来の資金繰りを予測する支援を行うことがあります。
さらに、金融機関から融資を受ける場合には、決算書や事業計画などの資料作成について相談できる場合もあります。
融資・金融機関対策
銀行などの金融機関から融資を受けたい場合、会社の財務状況や今後の事業計画を分かりやすく説明することが重要です。
税理士は日頃から決算書や試算表を確認しているため、現在の財務状況を踏まえて、どのような資金調達が必要なのかを経営者と一緒に検討できます。
ただし、税理士が金融機関からの融資を保証してくれるわけではありません。
あくまでも、財務状況や事業計画を整理し、金融機関に説明しやすい状態を作ることが主な支援となります。
経費削減・利益改善のアドバイス
経営コンサルティングでは、コスト削減や利益率改善について相談することもできます。
例えば、売上が増えているのに利益が増えない場合、仕入原価や外注費、人件費、広告費などの状況を確認し、どこに改善余地があるのかを分析します。
単純に「経費を減らしましょう」と提案するのではなく、会社の成長に必要な支出まで削ってしまわないよう、利益を増やしながら事業を成長させるという視点で考えることが重要です。
部門別・商品別の採算分析
複数の商品やサービスを扱う企業では、全体の利益だけを見ても、どの商品が会社の利益に貢献しているのか分からないことがあります。
そこで、部門別、店舗別、商品別、顧客別などに売上や原価を分けて、採算を分析する方法があります。
「売れている商品」と「利益が出ている商品」は必ずしも一致しません。
税理士と一緒に採算を分析することで、価格設定や商品の見直し、撤退すべき事業などについて、数字を根拠に判断しやすくなります。
事業承継・M&Aに関する経営支援
事業承継やM&Aも、税理士による経営支援と相性の良い分野です。
例えば事業承継では、後継者への株式の移転方法や自社株評価、相続税・贈与税などを考慮する必要があります。
M&Aでは、株式譲渡と事業譲渡による税務上の違いや、M&A前後の税負担などを検討する必要があります。
税務だけでなく、「誰に事業を引き継ぐのか」「どのような形で会社を残すのか」という経営面まで考えることが、事業承継・M&Aにおける税理士の役割です。
税理士に経営コンサルティングを依頼するメリット
税理士による経営コンサルティングには、一般的な経営コンサルタントにはない強みがあります。
会社の数字を継続的に見てもらえる
税理士に顧問を依頼している場合、毎月の試算表や決算書などを通じて会社の財務状況を継続的に見てもらえます。
経営状況を一から説明する必要が少なく、過去から現在までの数字の変化を踏まえて相談できることは大きなメリットです。
例えば「去年より売上は増えたが利益率が下がっている」といった変化についても、過去のデータと比較しながら原因を探ることができます。
税務と経営をまとめて相談できる
経営者にとって、経営上の判断と税金の問題は切り離せないことがあります。
設備投資をするときには、資金繰りだけでなく減価償却などの税務も関係します。
法人化するときには、事業運営だけでなく法人税や役員報酬などの税務も考える必要があります。
事業承継やM&Aでは、さらに相続税・贈与税・法人税などが関係する可能性があります。
そのため、経営判断と税務を同時に考えられることは、税理士による経営コンサルティングの大きなメリットといえるでしょう。
中小企業の経営課題を相談しやすい
大企業と中小企業では、必要な経営支援の内容が異なります。
中小企業では、経営者自身が営業、人事、資金繰り、経理など幅広い業務を判断しているケースも多くあります。
そこで、日々の経理や税務について相談している税理士に、「売上を増やしたい」「利益率を改善したい」「人を採用したい」といった経営上の悩みも相談できれば、経営者の負担軽減につながります。
一般的な経営コンサルタントと税理士の違い
「経営コンサルティングを依頼するなら、税理士と経営コンサルタントのどちらがよいのか」と悩む人もいるでしょう。
両者には得意分野の違いがあります。
| 比較項目 | 税理士 | 経営コンサルタント |
|---|---|---|
| 税務 | 強い | 専門外の場合が多い |
| 会計・財務分析 | 強い | 得意とする場合がある |
| 資金繰り | 対応しやすい | 専門性は会社による |
| 経営戦略 | 事務所によって対応 | 得意分野 |
| マーケティング | 事務所によって対応 | 得意とする場合が多い |
| 組織・人事 | 社労士などと連携するケースもある | 専門分野としている場合がある |
例えば、「節税を含めた設備投資の判断をしたい」「資金繰りを改善したい」「決算書をもとに利益改善を考えたい」という場合には、税理士の経営コンサルティングが向いている可能性があります。
一方で、「新規事業の市場調査をしたい」「大規模なマーケティング戦略を作りたい」「組織改革を進めたい」といった課題では、専門の経営コンサルタントと税理士を組み合わせる方法もあります。
重要なのは、税理士かコンサルタントかの二択ではなく、自社が抱えている課題に合った専門家を選ぶことです。
すべての税理士が経営コンサルティングに強いわけではない
注意したいのは、「税理士なら誰でも経営コンサルティングが得意」というわけではないことです。
税理士にはそれぞれ得意分野があり、法人税の申告や記帳代行などの税務業務を中心に行っている事務所もあります。
一方で、経営計画の策定、財務分析、資金繰り改善、M&A、事業承継などに力を入れている事務所もあります。
したがって、経営相談まで依頼したいのであれば、税理士を探す段階で「経営コンサルティングに対応しているか」を確認することが重要です。
経営コンサルティングに強い税理士の選び方
実際に税理士へ経営支援を依頼する場合は、次のようなポイントを確認しましょう。
経営支援の実績があるか
まず確認したいのは、実際にどのような経営支援を行ってきたのかです。
単に「経営コンサルティング対応」と書いてあるだけではなく、資金繰り改善、事業計画策定、利益改善、M&A、事業承継など、具体的な実績を確認するとよいでしょう。
自社と同じ業種の経験があるか
同じ経営コンサルティングでも、業種によって課題は異なります。
例えば、飲食店なら原価率や人件費率、建設業なら工事別採算や資金繰り、医療法人なら医療特有の会計・税務など、それぞれ見るべきポイントがあります。
自社と近い業種の顧問実績がある税理士であれば、業界特有の課題を理解している可能性があります。
経営者と直接話してくれるか
経営コンサルティングでは、決算書を見るだけでは十分ではありません。
経営者が何を目指しているのか、どのような問題を抱えているのかを理解したうえで、数字を分析する必要があります。
そのため、担当者が経営者と直接コミュニケーションを取り、経営課題について相談に乗ってくれる税理士を選ぶことが重要です。
税務以外の専門家とも連携できるか
経営課題によっては、税理士だけでは解決できないこともあります。
例えば、人事・労務については社会保険労務士、法律問題については弁護士、特定の補助金や公的支援については専門家など、必要に応じて他の専門家との連携が必要になります。
自分の専門分野だけですべて解決しようとせず、必要な専門家を紹介・連携できる税理士であれば、幅広い経営課題を相談しやすくなります。
税理士による経営コンサルティングはこんな会社におすすめ
税理士の経営コンサルティングは、特に次のような企業と相性がよいでしょう。
- 決算書を見ても会社の問題点が分からない
- 売上は増えているのに利益が増えない
- 資金繰りに不安がある
- 金融機関から融資を受けたい
- 今後の経営計画を作りたい
- 事業承継について考え始めている
- M&Aを検討している
- 経営について定期的に相談できる相手がほしい
特に、経営者が一人で会社の経営判断を行っている中小企業では、財務状況を把握している税理士に経営相談ができることで、判断材料を増やせる可能性があります。
税理士に経営コンサルティングを依頼するときの注意点
経営コンサルティングを依頼するときは、サービスの範囲と料金体系を事前に確認しておきましょう。
「顧問料の中にどこまで含まれているのか」「経営計画の作成には別料金が必要なのか」「訪問回数はどの程度なのか」などを明確にしておくことが大切です。
また、経営コンサルティングは、税務申告のように成果が明確に決まっているサービスではありません。
そのため、「売上を必ず○%増やす」「利益を必ず○円にする」といった結果だけで税理士を評価するのではなく、どのような分析を行い、どのような改善策を提案してくれるのかを確認することが重要です。
税理士に経営相談をするなら早めがおすすめ
経営に問題が起きてから相談するのではなく、できるだけ早い段階から税理士に相談することも重要です。
例えば、資金繰りが苦しくなってからでは、金融機関との交渉や経費削減を行う時間が限られてしまいます。
反対に、まだ資金に余裕がある段階から資金繰りを予測しておけば、設備投資や借入などについて余裕を持って判断できます。
同様に、事業承継やM&Aについても、直前になって相談するより、数年前から準備を始めたほうが選択肢を広げやすくなります。
税理士との顧問契約がある場合には、決算のタイミングだけではなく、毎月の試算表を見ながら経営について相談する体制を作るとよいでしょう。
まとめ
税理士による経営コンサルティングは、会社の決算書や試算表などの数字をもとに、経営改善や資金繰り、事業計画、利益改善、事業承継、M&Aなどを支援するサービスです。
税理士の法定業務は税務代理・税務書類の作成・税務相談ですが、これとは別に、経営支援をサービスとして提供する税理士事務所もあります。
特に税理士は、日頃から会社の会計・税務を把握しているため、一般的な経営コンサルタントとは異なり、「会社の数字」と「税務」の両方を踏まえて経営判断をサポートできる点が強みです。
一方で、すべての税理士が経営コンサルティングを得意としているわけではありません。
経営相談まで依頼したい場合には、M&Aや事業承継、資金調達、財務分析など、自社が必要とする支援の実績があるかを確認しましょう。
税務申告をしてもらうだけの税理士ではなく、会社の将来について一緒に考えてくれる税理士を選ぶことで、税理士を「税金の専門家」から「経営のパートナー」として活用できる可能性があります。
