もし顧問税理士の事務所が潰れたらどうする?代わりの税理士の手配は?
会社や個人事業主にとって、税理士は日々の経理や決算、税務申告などを任せる重要な存在です。
そのため、「もし顧問税理士が急に廃業したらどうなるのだろう?」「税理士事務所が閉鎖した場合、誰に申告をお願いすればいいの?」と不安に感じる人もいるでしょう。
実際には、税理士事務所が廃業したり、税理士本人が引退・死亡したり、何らかの理由で業務を継続できなくなったりする可能性はあります。
ただし、顧問税理士がいなくなったからといって、納税者側の申告義務までなくなるわけではありません。
そのため、税理士事務所の業務継続が難しくなったことが分かったら、できるだけ早く次の税理士を探し、必要な資料を引き継ぎ、今後の申告や納税に遅れが出ないようにすることが重要です。
また、税理士が税務代理を行う際には、税務代理権限証書によって代理権限を明示する仕組みがあります。新しい税理士に変更する場合も、新たな税務代理関係を整える必要があります。([nta.go.jp](https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/zeirishi/annai/001.htm?utm_source=chatgpt.com))
ここでは、顧問税理士の事務所が廃業・閉鎖した場合にどう対応すればよいのか、代わりの税理士をどう手配するのか、資料が手元にない場合はどうするのかなどを詳しく解説します。
顧問税理士の事務所が「潰れる」ことはある?
一般的には「税理士事務所が潰れる」という表現をしますが、実際にはさまざまなケースが考えられます。
例えば、
- 所長税理士が高齢になり廃業する
- 病気や死亡などによって業務を継続できなくなる
- 後継者がいないため事務所を閉鎖する
- 税理士法人を解散する
- 税理士登録を抹消して業務を終了する
- 業務停止などによって一時的に担当できなくなる
などです。
特に小規模な個人事務所では、所長税理士自身が事務所経営の中心となっているケースが多いため、所長に何らかの事情が発生すると、顧問先も影響を受ける可能性があります。
一方で、税理士法人などの比較的大きな組織では、担当税理士が退職しても別の税理士へ引き継がれることがあります。
そのため、顧問税理士を選ぶ際には、税務知識や料金だけでなく、万が一担当者が業務を続けられなくなった場合の引き継ぎ体制も確認しておくと安心です。
顧問税理士がいなくなっても申告期限は延長されない
最も注意したいのが、この点です。
顧問税理士が廃業したからといって、会社や個人事業主の税務申告期限が自動的に延長されるわけではありません。
例えば、
「来月が法人税の申告期限なのに税理士事務所が閉鎖した」
「所得税の確定申告を依頼していた税理士が急に引退した」
という場合でも、原則として納税者自身が期限を意識して対応する必要があります。
そのため、税理士事務所が業務を継続できなくなった場合には、新しい税理士探しと並行して、直近の申告期限を確認することが最優先です。
特に決算直前や確定申告期間中の場合には、通常の税理士変更よりも急いで対応する必要があります。
まず確認するべきことは「現在どこまで処理が進んでいるか」
税理士事務所の閉鎖が分かったら、最初に確認したいのが現在の税務・会計業務の進捗状況です。
例えば、
- 月次試算表はどこまで作成されているか
- 記帳は何月分まで終わっているか
- 決算作業はどこまで進んでいるか
- 申告書は作成済みなのか
- 申告はすでに完了しているのか
- 納税額は確定しているのか
- 税務署から届いている通知はあるか
などを整理します。
例えば「決算書は完成しているが申告書をまだ提出していない」というケースと、「そもそも記帳が数か月分止まっている」というケースでは、新しい税理士が必要とする作業量が大きく異なります。
そのため、現在の状況をできるだけ具体的に把握しておくことが重要です。
旧税理士から資料を引き継ぐ
新しい税理士へ変更する際に非常に重要なのが、これまでの会計・税務資料の引き継ぎです。
理想的には、旧税理士から次のような資料を受け取っておきます。
- 過去の法人税・所得税申告書
- 消費税申告書
- 決算書
- 総勘定元帳
- 仕訳帳・会計データ
- 固定資産台帳
- 試算表
- 給与・年末調整関連資料
- 償却資産申告関連資料
- 税務署・自治体への各種届出書
- 電子申告の受信通知等
- 過去の税務調査に関する資料
特に会計ソフトのデータは重要です。
紙の申告書だけが残っていても、仕訳や補助科目などの詳細なデータがなければ、新しい税理士が過去の処理を確認するために時間がかかる場合があります。
そのため、「税理士が変わる前に、現在使っている会計データを確保しておく」ことが大切です。
税理士が突然連絡不能になった場合はどうする?
特に困るのが、税理士が急に連絡を取れなくなったケースです。
事務所が通常どおり営業していない、電話がつながらない、メールにも返信がないなどの場合には、まず契約書や請求書などから事務所の正式な名称・税理士名を確認します。
そのうえで、税理士が現在も登録されているか確認する方法があります。
日本税理士会連合会の「税理士情報検索サイト」では、登録されている税理士・税理士法人の情報を検索できます。掲載情報は2026年8月31日時点の登録情報をもとに公開されています。([zeirishikensaku.jp](https://www.zeirishikensaku.jp/?utm_source=chatgpt.com))
税理士が廃業や登録抹消などをしていることが確認できた場合には、すぐに別の税理士を探し始めましょう。
代わりの税理士はどうやって探せばいい?
新しい税理士を探す方法はいくつかあります。
最も基本的なのは、インターネットなどで税理士事務所を探し、複数の事務所へ相談する方法です。
また、日本税理士会連合会の「税理士情報検索サイト」で登録状況を確認することもできます。([zeirishikensaku.jp](https://www.zeirishikensaku.jp/?utm_source=web))
そのほか、
- 取引先や同業者から紹介してもらう
- 金融機関から税理士を紹介してもらう
- 商工会議所や商工会に相談する
- 税理士紹介サービスを利用する
などの方法もあります。
ただし、急いでいるからといって、最初に見つけた税理士へそのまま依頼する必要はありません。
特に決算直前など緊急性が高い場合でも、「今の状況を引き継げるか」「申告期限までに対応できるか」を事前に確認することが大切です。
新しい税理士を探すときは「引き継ぎ対応」ができるか聞く
税理士事務所へ問い合わせるときは、単に「顧問契約できますか?」と聞くだけではなく、事情を具体的に説明しましょう。
例えば、
「今の顧問税理士が廃業してしまった」
「決算まであと1か月しかない」
「前年度の申告書は手元にある」
「会計データは手元にある」
などです。
こうした情報を伝えることで、新しい税理士側も必要な作業量を判断しやすくなります。
特に重要なのは、
「いつが申告期限なのか」
です。
決算申告まで時間がない場合には、新しい税理士事務所も通常の新規顧問とは異なるスケジュールで対応する必要があります。
税務代理は自動的に新しい税理士へ移るわけではない
税理士変更の際に注意したいのが、税務代理の権限です。
税理士が税務代理を行う場合、税務代理権限を有することを証する「税務代理権限証書」を税務官公署へ提出します。([nta.go.jp](https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/zeirishi/annai/001.htm?utm_source=chatgpt.com))
したがって、顧問税理士が変わった場合には、「前の税理士から新しい税理士へ何となく引き継がれる」というものではありません。
新しい税理士との委任関係に基づいて、必要な税務代理の手続きを行うことになります。
また、旧税理士側についても、税務代理の委任が終了した旨を税務官公署へ通知するための手続きが用意されています。([nta.go.jp](https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/zeirishi/annai/004.htm?utm_source=chatgpt.com))
つまり、税理士変更では、
「旧税理士との契約・委任を整理する」
「新しい税理士と契約する」
「新しい税理士による税務代理の体制を整える」
という流れを考える必要があります。
電子申告を利用している場合も注意
現在は多くの企業や個人事業主がe-Taxなどを利用して申告しています。
税理士が電子申告を行っていた場合には、申告データの送信だけでなく、税務署からの電子通知などについても確認しておきましょう。
e-Taxでは、受信通知や申告に関するお知らせがメッセージボックスに保存され、通常は格納から1,900日間、約5年間保存されます。120日を経過したものは「過去分」の画面へ移されます。([e-tax.nta.go.jp](https://www.e-tax.nta.go.jp/toiawase/qa/yokuaru05/08.htm?utm_source=chatgpt.com))
また、納税者自身がe-Taxを利用していれば、申告書などを確認する方法も用意されています。国税庁は、e-Taxの受信通知から送信した申告書等を確認できるほか、一定の申告書等について「申告書等情報取得サービス」や「申告書等閲覧サービス」を案内しています。([nta.go.jp](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9211.htm?utm_source=chatgpt.com))
そのため、旧税理士の事務所がなくなってしまった場合でも、過去の申告内容を確認する手段がまったくなくなるとは限りません。
過去の申告書が見つからない場合はどうする?
最も困るのが、旧税理士が突然いなくなり、過去の申告書や会計資料も手元にないケースです。
この場合でも、すぐに「何も分からないから申告できない」と考える必要はありません。
国税庁では、納税者が過去の申告書等の内容を確認する方法として、e-Taxの受信通知からの確認、申告書等情報取得サービス、申告書等閲覧サービスなどを案内しています。([nta.go.jp](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9211.htm?utm_source=chatgpt.com))
また、過去の帳簿や申告書を失った場合でも、取引先や金融機関などから資料を集めて、合理的な方法で帳簿や申告に必要な情報を復元することが必要になる場合があります。国税庁も、帳簿書類や過去の申告書控えを失った場合には、可能な範囲で資料を照会して復元する方法を案内しています。([nta.go.jp](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/saigai/8017.htm?utm_source=chatgpt.com))
そのため、新しい税理士には「資料がありません」と伝えるだけではなく、
「どの年度まで資料があるのか」
「何がなくなっているのか」
「銀行や取引先の資料は残っているのか」
を整理して伝えることが重要です。
新しい税理士に最初に渡すべき資料
税理士変更をスムーズに進めるためには、できるだけ多くの資料を整理しておきましょう。
特に準備しておきたいのが、
- 直近数年分の申告書
- 決算書・試算表
- 総勘定元帳
- 会計ソフトのデータ
- 銀行口座の明細
- 借入金の返済予定表
- 固定資産台帳
- 給与・年末調整資料
- 消費税関連資料
- 税務署からの通知
などです。
法人であれば、定款や登記簿、株主関連資料なども新しい税理士が確認する場合があります。
また、不動産、相続、事業承継、M&Aなど特殊な事情がある場合には、それらに関する過去の資料もできるだけ整理しておきましょう。
決算直前なら「料金」より対応可能かを優先する
顧問税理士の事務所が突然なくなったタイミングが、決算の直前だった場合には特に注意が必要です。
通常の新規顧問契約であれば、過去資料を確認してから業務を開始することができます。
しかし、申告期限まで数週間しかない場合には、過去資料の確認、会計入力、決算、申告書作成まで短期間で進めなければならない可能性があります。
このような場合には、
「料金が一番安い税理士」
よりも、
「この期限で対応可能な税理士」
を優先して探すことが重要です。
もちろん料金の確認も必要ですが、まずは申告期限に間に合う体制を作ることを優先しましょう。
税理士を変更するなら、今後の専門分野も考える
せっかく税理士を変更するのであれば、単純に「次に頼める税理士」を探すだけではなく、自社に合った税理士を探すことも重要です。
例えば、
- 不動産業に強い税理士
- 飲食業に強い税理士
- 建設業に強い税理士
- 相続・資産税に強い税理士
- 事業承継・M&Aに強い税理士
- IT・スタートアップに強い税理士
など、税理士にも得意分野があります。
特に今後、事業を拡大したい場合や、法人化、相続、事業承継などを予定している場合には、その分野に詳しい税理士へ変更することも選択肢になります。
顧問税理士の廃業に備えて普段からやっておきたいこと
税理士事務所が突然なくなるケースを完全に防ぐことはできません。
だからこそ、日頃から自社でも一定の資料を管理しておくことが重要です。
例えば、
- 過去の申告書を自社でも保存する
- 会計データのバックアップを取る
- 銀行明細を管理する
- 税務署からの通知を保管する
- 契約書や固定資産関連資料を整理する
- 現在の申告期限を把握する
といった準備をしておきます。
特に会計データを税理士事務所のパソコンだけに置いておくのは避けたほうがよいで
